外壁塗装工事の原価と内訳
インターネットで検索すると外壁塗装工事1式598,000円とか、398,000円などという激安の広告も目にしますが、これらは絶対にあり得ない価格です。
下の円グラフは外壁塗装工事の原価比率と内訳です(当社比)が、だいたいこのような内訳になります。

これを仮に工事代金が598,000円の場合で計算すると、
工事費/内訳 | 足場代15% | 材料費20% | 人件費30% | 利益+営業経費35% |
---|---|---|---|---|
89,700円 | 119,600円 | 179,400円 | 209,300円 |
このような内訳になります。ここで工事品質に大きく関わってくる項目は足場代と人件費の部分です。
では、外壁塗装工事にどんな工種が何人くらい必要なのかをみて行きましょう。
外壁塗装工事必要な職人と人数
35坪程度の2階建て戸建てのサイディング外壁の一般的な住宅とします。まず足場を組み立てる鳶工が組み立てに2~3人工、解体に2~3人工必要です。2名で組払いをし1名が運搬役です。3人ペアで2日ですから、
89,700÷6=14,950円/鳶1人あたりの日当 になります。
物理的には2人でできないことはありませんが、相当な施工スピードと気力が必要になりますので、物損事故が発生する確率が高くなるので3人ペアが理想です。
併せて足場を組み立てる際、妨げになるカーポートの屋根や波板などを一旦取り外す雑工が1人必要になります。一旦取り外して復旧するので2人ですね。
次にシーリングを打ち替えるシーリング工が3~4人工必要です。そして塗装工が13~15人工と行ったところが標準だと思います。
雑交2人+シーリング工4人+塗装工14人=20人
179,000÷20人=8,950円/1人当たりの職人の日当になります。
25日働いても223,750円/月給、こんな日当では生活できません。
ここで重要なのは材料費と人件費の内訳です。請負金額が低くなればなるほど、材料費と人件費は圧迫されていきますので、単純にいえば材料費はできるだけ少なく、人件費もできるだけ少なくなるということです。人件費が少なく済むという事は仕事量が少なく済むということですが、これを聞いてどんなことを想像しますか?
人数を減らすためには仕事量を減らすしかありませんし、材料を減らすには材料を使わないか何かを混ぜた薄めるしかありません。
言わずともわかると思います。
売値と利益
「もう少し安くなりませんか?」と値交渉される方がいらっしゃいますが、これは言い換えれば、うちの仕事をやって倒産しなさいと言っているようなもの、と言ったら過言かもしれませんが、ベクトルはそういう事と同じです。
利益と聞けばあまり良いイメージがないと思いますが、利益=丸儲けではありません。社長だけでなく事務員や営業担当、現場監督などの給料が必要ですよね。事務所の家賃、電話代、パソコンや複合機もあります。電気や水道、営業車両やガソリン代、車検や保険代、駐車場費、広告宣伝費もかかります。
これらの固定費はすべて利益から支払われるものですから、利益がないと会社は成り立ちません。少なくとも粗利で最低35%程度は必要になります。
例えば100万円の工事であれば最低35万円は粗利が出なければ会社は赤字になるということです。
仮に100万円の工事を10万円値引きしたとします。
原価が65万とすると、
100万-65万=35万・・・粗利
10%値引きした90万の場合は、
90万-65万=25万・・・粗利
売値
100万→90万
利益
35万→25万
売値は10%の値下げでも、利益は実は28%も下がっています。これは会社としては死活問題ですよね。
建築土木の世界は未だにどんぶり勘定が多いです。工事金額が大きいので少々値引きしても大丈夫だろうと錯覚しているだけで、実は大変なことに気づいていないのです。
極端なことを言えば、工事金額が1億円だとします。10%値引きすると9,000万円ですね。1,000万というあり得ない値引き額ですが、9,000万円あるから大丈夫だろうと錯覚してしまうのです。
ですから、簡単に10%も値引きするような業者は信用になりません。経営状況が悪いか、計画倒産するつもりか、単純に計算が出来ないかのどれかです。
今いくらで買い物をするか、少しでも安くなれば嬉しいのは誰でもそうですよね。でも、安くしてくれたから得した気分になるというのは本末転倒です。
一番大切なのは、工事が終わってお金を支払った後でも何かあれば面倒を見てくれるかくれないかではないでしょうか。