ここからは塗装工事の品質にこだわるという方のためのシーリングに関するプロのうんちくです。
このページを読むと、外壁塗装で行うシーリング補修は後打ちがいいのか?先打ちがいいのか?など、シーリングについて理解できます。
目 次
外壁塗装とシーリング材
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シーリングとかコーキングとか聞いたことがあると思いますが、現在ではシーリングと呼ぶのが正しい呼称です。
このシーリング材の役割は建物の防水性や気密性を保つために隙間や目地などに詰めるいわばゴムパッキンのようなものです。
シーリングの中でも呼び名が違うものもあります。正確には現場で充填して固めるものを不定形シーリング材といいます。どんな形にも定まっていないから不定形というわけですね。
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これに対して定型シーリング材というものがありますが、これはわかりやすく言えばゴムテープです。主にサイディングの下層で窓周りや開口部などに使ってあります。
外壁の塗り替え工事ではほとんど、不定形シーリング材を使います。
ただし、部位によって使っていいものと使ってはいけないものがあるので要注意です。
シーリングの補修は、「打ち替え」と「打ち増し」がある
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この画像は、シーリングがひび割れているように見えると思いますが、実はシーリングには全く問題はなく、上層にかけた塗装がひび割れている現象です。
外壁の塗装部分はきれいなのに、目地シーリング部分が割れていると、見た目も良くないですよね。
なぜこのような現象が起きるのでしょうか?
それは、
①柔らかいシーリングの上に硬い塗料を塗った
②シーリングの硬化が不十分なまま塗装をした
③触った(指で押した)このどれかが原因です。この場合は地上から手が届く高さではないことから、①か②のどちらかが原因です。
この現象は、サイディング、モルタル、コンクリート造を問わず、どの構造でも見受けられる現象です。
つまり、シーリングの上に塗装をかけるとこのひび割れ現象は避けられないということになります。
よって、シーリング部分の上に塗装をかける場合は割れるということをあらかじめ理解しておく必要があります。
また、シーリングの上にクリアー塗装をすると、経年で黄色っぽく変色したり、この画像のようにシーリングの上のクリアー層にしわが寄ってぽろぽろ剥がれてくることがあるので注意が必要です。
目地シーリングの青い防水紙とは
「サイディングの目地シーリングを打ち替えるときに青い防水紙が剥がれているのですが、そのままシーリングしても大丈夫なのでしょうか?」という質問をいただくことがあります。
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シーリングを打ち替えるときの青い防水紙、これは防水紙ではなく、ボンドブレーカーです。
ボンド(BOND)には固着する、付着するという意味があり、ブレーカー(BREAKER)は遮断する、遮るなどの意味で、シーリングの施工上でいうボンドブレーカーの意味は、シーリング材をくっつけないようにするもの、ということです。
上図は窯業系サイディングの目地部分の構造です。青い部分がシーリングを目地底に付着させないようにするためのボンドブレーカーです。
この青いビニールがシーリング材を撤去した時に一緒に剥がれてしまったけど大丈夫か?という質問ですね。
答えは、大丈夫ではありません。剥がれてしまったものは仕方がありませんが、新たに目地底にボンドブレーカーを張る必要があります。
ボンドブレーカーを使用した2面接着とは
サイディング目地にシーリング材を充填する際、左側のサイディング側面1、右側のサイディング側面2、目地底3というように3面にシーリングを接着させてしまうと、サイディングが伸縮したときにシーリング材が追従できず破断しやすくなるので、目地底にはシーリングがくっつかないよう、ボンドブレーカーを張ります。
すると、1と2の面だけで接着するので、これを2面接着といいます。
シーリングがひび割れるのはなぜ?
古いシーリング材のことを既存シーリング材、もしくは在来シーリング材と言いますが、既存のシーリング材を撤去して新しくシーリング材を充填することをシーリング打ち替えと言います。
これに対し、古くなったシーリング材は痩せてくるので、ひび割れたり痩せている古いシーリング材の上に薄く新しシーリング材を塗ることをシーリング増し打ちと言います。
業者の中には「シーリングの上から塗装してあるので今回は打ち替えなくても大丈夫」なんて間違った診断をする業者もいます。
シーリングは塗り替え時には原則打ち替えてください。※表面が硬い吹き付け塗材で覆われている場合は除く
シーリングの表面が割れないようにするには?
シーリングの表面が割れないようにする対策としては、
①柔らかい塗料を塗る
②十分に乾燥硬化してから塗装をかける
③触らない(指で押したりしない)
④高耐久シーリングを後打ち(上から塗装をかけない)仕上げにする
この3つです。
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まず柔らかい塗料を塗ると割れにくくなりますが、外壁の透湿性の問題があるので柔らかい塗料を塗りさえすればよいという単純な話ではありません。
シーリングがしっかり乾燥硬化してから塗装をかけるというのがすべての現場に望まれる方法ですが、早く塗装して終わらせたいと考える業者が多いので、乾燥硬化が不十分だとシーリングがやせる時に塗膜に応力がかかるのでひび割れが発生してしまいます。
塗料の硬さの問題より②シーリングの乾燥が不十分で割れていることが多いと思います。
最も確実な方法は④のシーリングを後打ちにする方法です。新築時と同じようにシーリングは露出仕上げになりますから、高耐久シーリング材を選定しなければなりません。
例)オートンイクシード、SRシーリングH100など外壁の仕上げ色と同じ色のシーリングを作ることが可能ですので、色が違うなどの心配はありません。
今後はシーリングは後打ち工法が主流になってくると思います。
目地シーリングの寿命を延ばしたい場合
外壁塗装で塗料の耐久性は良いとしても、目地シーリングが破断したのでは本末転倒です。シーリング材の耐久性も含めて低予算で長持ちさせたいならシーリング材の上から塗装をするしかありません。
ただし、塗料メーカーはシーリングの上には塗装しないでくださいと言ってますから、イレギュラーな方法である、言い換えればメーカーは責任もちませんよ、業者さんの自己責任ですよ、ということですから、業者と施主間でしっかり協議する必要があります。
※大同防水は高耐久シーリング材後打ち工法を標準スペックにしています。
例えば、高耐久シーリング材を使いたいけど予算が足りなくて一般的なシーリング材を使うしかないような場合や、多彩模様などの吹付仕上げなのでシーリングの上からも塗装するようなケースの場合は、シーリングを十分に乾燥硬化(できれば7日間程度)させてから微弾性フィーラー原液を表面に塗布して塗装をかければ割れにくくなります。
ただし、繰り返しますが、塗料メーカーは塗らないで下さいと言っているわけですから、この方法で施工する場合は業者と施主の双方での事前協議と確認が必須となります。
正しいシーリング材の選定と使用部位
サイディング住宅の場合 | サッシ周りはウレタン系や変成シリコン系(上から塗装するならノンブリードタイプ) |
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モルタルのV目地 | アクリル系(ノンブリードタイプ白) |
ガラス周り | シリコン系(サッシの色に併せて/黒・ダークブラウン・ブロンズ・グレー・クリアー) |
ポリカーボネートの隙間 | シリコン系(黒かクリアー) |
波板と竪樋の隙間 | シリコン系(クリアー) |
外壁に使ってはいけないシーリング材
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まずよくある外壁に絶対使ってはいけないシーリング材がこれ。シリコン系シーリング材です。ホームセンターなどで一番安く購入できるので、設備業者さんやガラスサッシ屋さんなどがあと先のことを考えずに使ってくれるからやっかいなのです。
このシリコン系シーリング材は熱や水に強い特性があり、主にガラス周りやキッチン、浴槽周りなどに使うもので、建物の外壁には絶対に使ってはいけません。なぜなら、塗料を弾くので色が付きません。そしてもうひとつ、このシリコン系シーリング材は経年後、外壁を黒く汚してしまいます。
シリコンの成分に含まれるオイルや可塑剤(かそざい)が溶け出し、静電気を帯びて空気中の汚れをくっつけてしまうのです・・・外装には使ってはいけないシーリング材です。
※シリコンがよく使ってある部位・・・波板テラス取り合い、換気ガラリ周り、BSアンテナ基礎、その他お施主様のDIYによるひび割れ補修
塗装するときにはこれらのシリコンはすべて撤去しなければなりませんのでDIYでも絶対に使用しないでください
塗料とシーリングの相性および対策
塗料/項目 | シーリング表面 | 推奨される対策 |
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ガイナ・日進産業 | 割れる | オートンイクシードを後打ち |
UVプロテクトクリアー・日本ペイント | 黄変する・しわがよる | オートンイクシードを後打ち |
無機UVコートクリアー・日本塗装名人社 | 問題なし | 上から塗れるorオートンイクシードを後打ち |
リファイン1000Si・MF/アステックペイント | 問題なし | 上から塗れる・変成シリコンを先打ち |
ランデックスコートPB-5000 | 割れる | 上から塗れる・変成シリコンを先打ちorオートンイクシードを後打ち |
結論としては、シーリングの上に塗装する場合は、一般的な変成シリコン系シーリング材で大丈夫ですが、より長持ちさせたい方は上から塗装する場合でもオートンイクシードにされたら良いと思います。
クリアー塗装仕上げ面は高耐久オートンイクシードを推奨します。
ただし、今後はシーリングは後打ちが基本になると思います。
次世代型高耐久・高耐候シーリング材オートンイクシード#15について
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従来のシーリング材の耐用年数は5~6年と言われていましたが、昨今では次世代型高耐久シーリング材が開発され、特に新築住宅への採用が始まっており、外壁塗り替え工事においてもニーズが高まって来ております。
俗にこれらのシーリング材は従来のシーリング材よりも長持ち、15年持つといわれております。
でもこれを鵜呑みにするのはどうかと思います。5年しか持たないといわれていたものが倍の10年ならまだしも一気に3倍の15年なんてありえるのだろうか?素人目線での素朴な疑問です。
シーリング材の劣化は何も紫外線をどれだけ浴び続けられるかという点だけではありません。構造体の動きに対して伸縮し追従し、破断したり剥離しないことが最も重要です。
表面から劣化が進んでくるものですから、表面が割れて見えても、破断や剥離していなければまだシーリング性能は発揮していることになります。
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私はこう考えています。
シーリングを必要とするサイディング壁の新築住宅において、サイディング切断面と切断面の隙間(目地)にゴミ等が付着していない綺麗な被着面に対して高耐久シーリング材を使った場合は確かに15年もつのかもしれません。
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しかし改修工事においては既存のシーリング材を撤去して、新たに充填し直すものですから、左の画像のようにどうしても被着面には古いシーリング材のカスが残ってしまう、その上にプライマーを塗布して高耐久シーリング材を充填すると、新築時の状態より密着性が落ちるはずだと。
つまりメーカーの実験で15年というものは新築に使った場合の話しで、改修の場合はそれよりも大幅に低く見積もっておくのが正しいと考えます。
ではどのくらいと思えば良いかですが、実際に施工した物件がまだ15年経過していないので一概には言えませんし、そもそも言える人はいないはずです。私の見立てでは10年~12年持てば御の字ではないかと考えています。
結論としては、従来のシーリング材より長持ちすることは間違いないですが主に壁が伸縮するサイディング外壁の建物には、高耐久シーリング材を使う方が良いですが、過剰な期待は禁物ということです。