「相見積もりを取った各社で、足場の面積(数量)がそれぞれ違う」もしくは「足場代がそれぞれ違う」という相談がよくあります。
このページでは、足場の面積や足場代が各社で異なる理由を説明していきます。
他社と足場面積(数量)が違う理由
外壁塗装のお見積りを提出すると、“足場の面積(数量)が他社と違うのですがどうしてですか?”と質問されることがよくあります。どうしてそんなことになるのでしょうか?
答えは、面積(数量)の算出方法が各社それぞれ違うからです。
たとえば「足場1式で○○円」とアバウトで見積る業者もいれば、ハウスメーカー様などは外壁の面積と同じ数量を入れていることもあります。
こちらの画像をご覧ください。
赤枠で囲った範囲が外壁で青枠が開口部です。開口部とは窓など塗装しない部分を指します。
外壁の塗り面積を算出する際は、外壁の面積(A)-開口部の面積(B)=塗装する面積(外壁の面積)となります。たとえば赤枠が50㎡青枠が10㎡だとすると、50-10=40㎡ が北面の塗装面積になります。
続いてこちらの画像をご覧ください。
オレンジ枠で囲った範囲が足場の面積(仮設範囲)です。明らかに外壁の面積よりも広いですよね。通常は壁から15~20cm程離して60cm幅の足場を組みます。また塗料の飛散防止と作業員の転落防止などの目的で、屋根より1m程度足場を高く上げます。
このように実際に足場を組む範囲のことを架け㎡(かけへいべい)と言い、これが正しい足場面積の算出(積算)方法です。
面積(数量)が違っていても安い方がいい?
お客様からすると、たとえ面積が違っていても少しでも見積もり金額が安い方がいいと思われるかもしれません。
でも面積(数量)が実際の数量とは大きく異なるような積算をする業者を本当に信用できますか?
もしかすると、工事が終わったあとで実際の面積と違っていたからと追加工事として請求されるかもしれません。
あるいは、外壁の面積を計算できない(計算しない)業者は、A材とB材を正しい比率で混ぜ合わせなければならないような塗料だった場合、果たしてしっかりと混ぜ合わせることができるのでしょうか?
アバウトに混ぜ合わせると硬化不良を引き起こしたり、耐久性が著しく低下してしまいます。
また外壁の塗装面積が150㎡、足場の仮設面積も150㎡のようになっている業者は、足場屋さんと揉めたりしないでしょうか?
もし足場屋さんが1割分多めにみて、165㎡分の足場資材を現場に持ってきたとしても、実際はまったく足りずに再度資材を取りに帰ることになってしまいます。
そうなると、1日で作業も終わらず人件費や資材代が追加でかかるので、足場屋さんが塗装店に追加請求します。また、ご近所様にも迷惑をかけることになりそうですね。
足場の面積や外壁の面積が他社と大きく違う業者は、工事の品質も低い可能性があります。
各社の見積書で足場代が違う理由
「数社から見積もりを取ってみると、各社で足場代が全然違う。一体何を信じていいのかわからない。」というような相談もよくあります。
ひとくちに足場と言っても、足場の種類や関係法令があるのをご存知でしょうか?足場の種類が違えば施工単価も違いますから、足場代に差が出るのは当然と言えば当然です。
足場は、職人が安全に作業できるよう、また細かいところまでしっかりと作業ができるよう組むものです。いくら工事が終わったら無くなるものであっても、コストを削ると品質に比例してしまうので本末転倒になります。
それでは、足場の種類と単価を説明していきます。
ビティ足場(枠組み足場)m2あたり1,200円~
ビティ足場は作業床の幅が広く、主に高層ビルやマンションなどの建設工事、橋梁などの土木工事に使われています。
枠の幅が広いため、土地境界が限られている戸建て住宅の外壁塗装工事にビティ足場が使われることはほとんどありません。
ビケ足場(くさび緊結式足場『くさびきんけつしきあしば』)m2あたり800円~
ビケ足場(くさび緊結式足場)は、ビティ足場よりも枠幅が狭く、主に一般の住宅の建築や外壁塗装工事などに使われます。
くさび緊結式というように、足場の部材と部材をたたき込むことで組み立てていきますので、組み立て・解体時にハンマー騒音が出るのが特徴です。
単管足場 m2当たり600円~
単管足場は、主に隣地境界が狭く作業床が確保できない場合、あるいは足場に段差が生じて枠組みできない時などに使われます。
見積書に足場単価が600円くらいで記載してある場合はこの単管足場で組み立てるものと思われますが、住宅に使う場合は安全衛生法違反となります。
足場に関する法律「労働安全衛生規則」
労働安全衛規則の第546条で、高さが2m以上の足場には幅40cm以上の作業床がなければならないと規定されております。※設置できないなど特別な場合を除く
一般住宅でも、作業床がない単管足場を使うことは違法ということになり、事故を起こすと厄介なことになります。また、サルの曲芸のように単管にぶら下がって丁寧な塗装作業ができるはずがありません。
そもそも、いくら安くても作業しにくい違法な足場を組むつもりで提案してくるような塗装業者は、避けた方がよろしいかと思います。
*画像は全国仮設安全事業協同組合ガイドラインより抜粋
まとめ
相見積もりを取ると、各社足場の面積(数量)や足場代が違うことはよくあります。この理由は、面積の算出方法が、それぞれ違うことがあるからです。
足場の面積や外壁の面積が他社と大きく違うところは、工事の品質も低い可能性があります。
足場代が違うのは、ひとくちに足場と言っても足場の種類が複数あるからです。戸建て住宅の場合は、一般的にビケ足場が使われ800円~/m2です。
注意が必要なのは、足場代を600円m2くらいで記載してある場合です。単価が安い場合は単管足場が使われる可能性があり、「労働安全衛生規則」の規定に違反する可能性があります。