代表:品川真一
塗り替えたらすぐに塗装が剥がれてしまった!というクレームが多いのがモニエル瓦です。
現在はメーカーの撤退により廃盤となっているため、塗装メンテナンスを行うか葺き替えるしかありませんが、コストを抑えるにはやはり塗装でメンテナンスしたいところですよね。
このページではモニエル瓦の見分け方や、塗装時の注意点、割れた瓦のメンテナンス方法などをご紹介しています。
目 次
モニエル瓦とは
モニエル瓦は、旧:日本モニエル株式会社が製造していた屋根材の商品名がそのまま呼称として残ったもので、高いシェアを誇っていましたが、現在は廃盤となっています。
とはいえ、まだまだ市場にはメンテナンスが必要なモニエル瓦の屋根が多数ありますから、メンテナンスの研究は続けていく必要があります。
正式名称は乾式コンクリート瓦といいます。カラーベスト(正式名称:平板スレート屋根)のような感じですね。乾式コンクリート瓦とは呼びにくいので、業界ではモニエル瓦と呼んでいます。
乾式コンクリート瓦には、主に以下の3種類があります。形状が違うだけで材質は同じです。
モニエル瓦の見分け方
屋根材がモニエル瓦かどうかを簡単に見分ける方法があります。瓦の先端部分がゴツゴツしていればモニエル瓦です。
一般的にモニエル瓦の塗装は、他の屋根と違ってさらに気を使わなければなりません。そのため、業者さんが最初に現地調査を行う際に、モニエル瓦だということに言及するかどうかで、その業者さんの知識レベルがわかります。
万が一モニエル瓦の見分けが付かないとすれば、その人は素人レベルで塗装のプロではないと言えます。
問題は、A社は「剥がれやすいから塗らない方が良いですよ」と言い、B社は「剥がれません、塗れますよ」と言ってきた場合です。これだとどちらが正しいのかわからないですよね。
もしもお客様が塗れるものなら塗ってもらいたいというお考えであるなら、「塗れますよ」と言った方の業者さんにモニエル瓦の塗装実績が豊富かどうか、保証が何年付くのか等を確認されると良いと思います。
塗装時に重要なのはモニエル瓦なのかを見極めること
まず大前提として、モニエル瓦かどうかを見極めることができるかどうかが、塗装時の重要なポイントとなります。
万が一モニエル瓦ではないと見誤ってしまうと、必要な下地処理を行わずに塗装したり、相性の悪い塗料を塗ってしまったりして、2~3年程度で剥がれてしまうケースもあるため要注意です。
モニエル瓦の塗装が剥がれると、もちろんお金の無駄になるばかりか、塗膜片が雨樋にたまって排水不良の原因になったり、風で飛散してご近所さんのお庭に落ちたりと、二次被害にも繋がります。
屋根材が剥がれて近所の敷地に落ちるなんて、恥ずかしいですよね。
モニエル瓦の塗装を邪魔するスラリー層とは
モニエル瓦はセメントでできた瓦です。瓦の形をした金型にセメントを流し込んで作ります。
セメントは水を吸い込みますから、そのまま屋根材として使うと雨が降るたびに瓦が雨水を吸い込んで屋根が重くなります。
そうなるとお家にかかる荷重が増えて天井が下がって来たり、建具が開閉しにくくなったり、あるいは地震の時に屋根が重くなるので倒壊の危険性が増します。
ですから、瓦が雨水を吸い込まないように防水塗装しなければならないわけです。この防水塗膜が「スラリー層」です。
右の写真は、高圧洗浄後に残ったスラリー層です。
スラリーとは、コンクリートと同じ材質の無機質着色剤を瓦に塗った防水塗膜のことで、スラリー層が残ったまま上から塗装すると剥がれてしまうことがあります。
そのため、塗装をする前にスラリー層を出来るだけ除去する必要があるのです。
モニエル瓦の下地処理
弱くなったスラリー層を出来るだけ除去するために、まず15Mpa(メガパスカル)の水圧で高圧洗浄を行います。
外壁の高圧洗浄は通常10Mpaの水圧で行うので、約1.5倍の圧力で洗浄してスラリー層をできるだけ除去しなければならないというわけです。
下地処理はこれで十分かといえばそうではありません。15Mpaの高圧洗浄でも除去できない弱くなったスラリー層の予備軍(脆弱層/ぜいじゃくそう)が残っていると、塗装してもすぐに剥がれてしまいます。
これまでは、この残ってしまったスラリー層をさらに除去するため、ディスクサンダーで研磨して除去するという方法で対応してきましたが、粉塵が発生することと騒音の問題、それから工数がかかるので塗装費用が高くなってしまうのが課題でした。
現在は入念に高圧洗浄を行った後に、ヤスリなどを使用して手作業で残ったスラリー層を除去する方法を用いるのが一般的です。
出来るだけスラリー層を除去したら、屋根をきれいな軍手で触ってみます。白い軍手にスラリー層がくっつかなければ合格です。塗装工程に進めます。
ここまで聞くとモニエル瓦の塗装は厄介なんだなと思われると思いますが、その通り厄介なんです。ですから、塗装したくないという業者さんが多いのも事実です。
モニエル瓦の塗装方法
下地処理が終わったら十分乾燥させてから塗装工程に入ります。ここで重要なポイントとなるのが、何を塗るか?です。
大同防水は、これまで様々なメーカーさんの塗料をモニエル瓦に塗ってきました。「モニエル瓦に塗れます」と謳っている塗料を塗ってきましたが、大なり小なりやはり剥がれてしまう経験をしてきました。
そんな中で全く剥がれない塗料に出会ったのが、オリエンタル塗料工業のマイティーシリコンです。
マイティーシリコンは元々、日本モニエル瓦が健在の時から、モニエル瓦のメンテナンス専用塗料としてメーカーに指定されていた塗料です。
さすがはさすが、マイティーシリコンに変えてからは全く剥がれなくなりました。マイティーシリコンには遮熱タイプのクール君もありますし、クリアーコーティングをすれば15年以上持たせることもできます。
モニエル瓦専用下塗り材を使用して耐久性アップ
名前がシリコンなので、「フッ素じゃないの?シリコンじゃ持たないでしょ」というイメージを持たれるかと思いますが、タフグロスコートというクリアーコーティングを塗るとフッ素以上に持たせることが可能です。
特に、オリエンタル塗料工業さんのモニエル瓦専用下塗り材であるオリトシールドが一押しです。写真はオリトシールドを塗装している様子です。
塗りにくい塗料ですが、密着力は抜群で、スラリー層が少々残っていても問題なく上塗りが密着します。
職人からも「塗りにくさはあるけど、オリトシールドを塗ると表面がツルツルになるのでこれは凄い!」と評判です。
マイティシリコンはシーラーレスじゃないの?!
オリエンタル塗料工業のマイティシリコンはシーラーレス、つまりシーラー(下塗り材)を塗らずにマイティーシリコンをいきなり屋根材に塗れる塗料です。
そのため、使い始めの頃は「本当にシーラーなしで大丈夫なのかな・・・?」という不安がありましたが、それでもこれまで剥がれたことはありません。
ただ、シーラーレス塗料であっても、高圧洗浄やセメントスラリー層の除去工程はしっかり行う必要があります。
では、オリトシールドは何なのか?ということですが、ひとことで言えば、「セメントスラリー層が少々残っていてもスラリー層ごとガチっと固めて密着をよくしてくれる下塗り材」になります。
15Mpaで高圧洗浄してセメントスラリー層をできるだけ除去すると言っても、〝できるだけ”という部分が人によって感覚が異なるものです。そうした下地処理工程では、職人の腕や感覚によって品質にバラツキが生じてしまうことになります。
オリトシールドを使うことによって品質が安定し、下地処理工程の手間が削減できるのはありがたいです。
モニエル瓦が割れていた場合はどうする?
写真は中古のモニエル瓦です。
モニエル瓦は廃盤になっている瓦ですから、現在は生産されていません。新品の瓦は基本的には存在しないということです。
例えば、どこかの商社の倉庫に新品の在庫が眠っている可能性はありますが、原則新品の瓦はありません。
では、割れていた場合はどうするのか?
モニエル瓦を葺き替える方がいらっしゃいます。この中古の瓦を捨てないで取っている業者がいるのです。つまり、中古品を探して手に入れるしかないということになります。
あるかないかはわかりませんが、瓦屋さんルートをたどれば、たいてい中古品が見つかります。
ただし、手元に届くまでに2~3週間かかることがあるので、もしモニエル瓦が割れていることが予めわかっているのであれば、工事着工までに先に差し替え用の中古瓦を探しておくことをお勧めします。
モニエル瓦の塗装は必要?放っておいたらどうなる?
モニエル瓦は塗装しないという考えの方もいらっしゃるようです。
また、大手ハウスメーカーさんの住宅で屋根にモニエル瓦が乗っている場合、「屋根は塗装はしないで、時が来たら葺き替えましょう」という提案をされている会社もあるようです。
それも選択肢のひとつで間違いではないのですが、せっかく足場を組んで外壁は塗装してきれいになったのに、屋根は色褪せたまま、コケで汚れたままの姿を見ると、もったいないな・・・と思います。
「モニエル瓦をこのまま放っておいたらどうなるの?」とよく質問をされますが、放っておいても瓦が割れたり強風で飛ばされたりしない限り、雨漏りすることはありません。
ですから、塗装しないという選択もありといえばありなのですが・・・
例えば、せっかくビシッときれいなスーツを着たのに、髪の毛がボサボサだったらどうでしょうか?中身は変わりませんが、見た目が残念ではないかと思うのです。
モニエル瓦が塗装できる状態なのであれば、外壁塗装と併せて塗装メンテナンスした方が良いのではないかと思います。
ちなみに、モニエル瓦を葺き替える場合は、基本的にはどんな屋根材でも選択できます。
屋根を葺き替える場合は現状のものより軽くするというのがセオリーなので、その点だけ注意すれば問題はありません。
また最近流行のカバー工法は、モニエル瓦では行えません。なぜなら、カバー工法は屋根を二重に重ねる工法なので、元から重量のあるモニエル瓦にさらに屋根を被せてしまうと、屋根が非常に重くなってしまうからです。
モニエル瓦のまとめ
【塗装メンテナンスをするなら】
・モニエル瓦かどうかを見極める
・15Mpaで高圧洗浄する
・スラリー層を出来るだけ除去する
・モニエル瓦メーカーの指定塗料を使う
【割れた場合の補修は】
・中古品を探すしかない
【葺き替えるなら】
・どんな屋根材でもOK
・カバー工法は不可