近くに現場があるので足場代をタダにします?
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外壁塗装をお考えの方で「近くに現場があるので足場代をタダにします」とか「足場代を半額にします」なんて言われたことはないでしょうか。
もしも本当ならすごく得した気分になりますよね。でもこんなことが本当に可能なのでしょうか?実際に検証してみることにします。
まず、外壁の塗り替え工事にかかる仮設足場代は平均20万円~30万円です。これは家の前にトラックを停められる場合の目安です。
例えば道が細くて少し離れた場所にトラックを停めて足場資材を運搬しなければならないとか、階段や坂を歩いて運ばないといけないような場合は別途小運搬費がかかります。
鳶職人の日当と内訳
一般的な2階建て木造住宅の外壁塗装を行うために足場を組むとして、鳶職人は最低でも組立て時に2人、解体時に2人の4人工は必要です。しかし実際は2人x2ではキツいので3人x2以上の人工がかかります。
また、足場資材は自社で所有していれば極論材料費はタダのようなものですが、持っていなければその都度足場資材リース会社から借りなければなりませんのでリース代が必要です。
鳶の日当を20,000円/1日と仮定すると、20,000円x2人x2回(組払い)=80,000円となります。これに運搬費と足場損料、利益を計上すると原価は100,000円を優に超えてしまいます。
これをタダにするということ自体おかしな話です。鳶に日当は払わないのでしょうか?払わないわけがありません。結局はちゃんと払っているのです。
足場代の算出方法と内訳明細
近くに現場があれば足場代が本当に安くなるのでしょうか。あるいは、今近くの現場で組んでいる足場を解体し、そのままの流れで足場を組んだら半額になるのでしょうか?検証してみます。
足場費用の内訳は一般的に下記のA~Dの合計で構成されています。
A.仮設足場組払い ○○㎡ x○○円
B.養生シート ○○㎡x○○円
C.昇降用階段 ○mx○○円
D.運搬費 ○○mx○○円
ここで近くに現場があるから足場代をタダにします、半額にしますというセールストークに当てはまるのは上記のDの項目ですよね。その他のAからCはどこに現場があろうと変わらないものです。
では近くの現場というのを最も近いお隣さんの家とすると、Dの運搬費は確かにタダ(無料)でも良いかもしれません。では仮にこれを広島から下関と離れている現場とするとどうでしょうか。

広島ICから下関ICまでの距離が199km、高速道路通行料金が約6,000円です。続いて、ガソリン代はというと・・・

軽油が1リッターあたり約85円です。軽油で走るトラックの燃費を5km/Lと仮定すると、片道199÷5=39.8L軽油が必要ですから、85円x39.8L=3,383円。高速通行料金6,000円+3,383円=9,383円。
仮に現場が広島と下関程離れていたとしても運搬費の原価はたったの9,400円しか変わらない計算になります。
*その他の自動車維持にかかる車検代や保険代、タイヤなど損料などは省きます
これは現場が遠かろうが近かろうが距離に関わるコスト部分は1割にも満たない、さほど影響はないということになります。これで「近くに現場があるから今なら足場代をタダにします」のセールストークはウソであるということがわかりました。
タダにはならないので結局は見積もりに含まれている
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外壁塗装工事をする場合、実際に外壁は綺麗になりますからお金をかけた甲斐があるというものですが、工事のために必要な足場は塗装工事が終われば無くなってしまう(お客様の所有物にはならない)ので無駄だとか、できるだけ安い方が良いという考えになりますよね。
実はこの「近くに現場があるので足場代をタダにします」というセールストークはそんなお客様の心理をついた巧妙なウソで、結局足場代をタダにするとか半額にするといった部分は最初から見積もり金額に含まれているのです。
実際にかかる足場代を仮に30万とすると、今注文すれば30万も得になるんだ!と思ってしまいますよね?
実は見積書のほかの項目に足場代が隠されているだけのトリックなのです。こうした甘いセールストークにはくれぐれもご注意ください。