スレート屋根の中には塗装できない・塗れない屋根があるので、屋根材の目利きが重要になります。
しかし、塗装業者なら当たり前に分かっているというわけではないので、業者によって意見が異なる場合があります。
不安に思ったら、屋根材に詳しい業者に診断してもらうことをお勧めします。
目 次
塗装できない屋根とは
2006年前後に製造販売されたスレート屋根は塗装できない屋根材である可能性が高いです。この時期は法改正によりノンアスベストへの切り替え時期に当たります。
塗装できない屋根材が製造された経緯
石綿(アスベスト)は、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で「せきめん」「いしわた」と呼ばれています。このアスベストは比較的安価で、建材に混ぜると建材の強度が増すことから、いろんな建材にアスベストが使われていました。
ところが、労働安全衛生法の改正により、2006(平成18)年9月からアスベストが0.1重量%を超えて含有する建材は、製造したり使用することが全面的に禁止されたのです。
このような事情から、2006年前後の2~3年間を含めた時期に世に出た屋根材は強度が不足しているため、自然に割れたり欠けたりする不具合を起こしているということです。
各メーカーはコスト面、強度面においても、アスベストに代わる物質を探さなければならなくなりましたが、ひとことで言えば、アスベストの代替品を見つけるまでの時間が足りず間に合わなかった、というのが本音ではないかと思います。
無理に塗装をするとトラブルに繋がる
上記で説明した屋根材は塗装しない方がいい、塗装できないと結論付けた方がいいくらいです。
もし業者の知識不足により塗装してしまったり、葺き替える予算がないからといって塗装によるメンテナンスを行ってしまうと、のちに屋根材の割れ・欠け・塗装が剥がれなどのトラブルに繋がる恐れがあります。
外壁であれば異常に気付くことが出来ますが、屋根は見えないのでお施主様は気付けません。施工業者がアフター点検を行ってくれる以外に状態を確認する術がないのです。
出来ればこうした屋根は塗装メンテナンスをせず、葺き替えるかカバー工法で改修されることをお勧めします。
ここでは塗装できない代表的な屋根材についてまとめています。
パミール/ニチハ 1996~2008年
パミールは1996年から2008年までニチハが製造していた屋根材です。
ミルフィーユのように自然に層状に剥離してくる現象が特徴的で、その他にも屋根材を留め付けている釘が錆びることによって釘頭の体積が膨張し、その圧力で脆弱した屋根材を欠損させてしまう現象も見られます。
パミールを固めるように塗装すれば多少は層状剥離を遅延させることが出来るかもしれませんが、屋根材の強度が上がるわけではないので、塗装をしたとしても無駄な工事になってしまいます。パミールは塗装すべきではない屋根材です。
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パミールの形状と見分け方
パミールは屋根材の先端部が凹凸形状になっています。
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パミールの不具合
7~8年でミルフィーユのように層状に剥がれていき、ボロボロになります。
レサス/松下電工 1999~2006年
レサスは旧松下電工(現ケイミュー)が1999~2006年の間に製造販売していた屋根材です。
レサスは屋根材が独立しているように見え、300㎜間隔で凹みの模様があるのが特徴です。
また、レサスは働きといって、上の屋根材と重なって隠れてしまう部分に六角形のマークがあるので、欠損しているとわかりやすいです。
レサスはとにかくひび割れが多く発生しますので、当然屋根の上を歩くと簡単に割れてしまいます。また釘の打ち込みが甘い箇所があるとコーナー部分が斜めに欠損することがあるので、レサスは塗装すべきではない屋根材です。
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レサスの見分け方
一見独立しているように見えますが、実は1枚910㎜幅あります。くぼみ模様があるのが特徴です。
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レサスのひび割れ
レサスはとにかく割れます。割れていなくても人が歩くとバリバリ割れます。
ザルフ(グラッサ)/旧クボタ 1997~2001年
ザルフ(グラッサ)は、見た目がコロニアルNEOとよく似ており間違えやすいので注意が必要です。
見分け方は屋根材と屋根材の隙間がコロニアルNEOよりザルフの方が広いということと、先端部分の凹みのコーナーがコロニアルNOEよりも鋭角である点です。
経年で屋根材が欠けたり割れたりするだけでなく、パミールのように屋根材がボロボロに破壊されてくることもあるので、ザルフは塗装できない屋根材です。
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ザルフ(グラッサ)の特徴
屋根材と屋根材の隙間がやや広めです。先端の凹部の出隅がR形状で、入隅が直角に近くて深いのが特徴です。
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コロニアルNEOの特徴 ※ザルフとの比較
屋根材と屋根材の隙間が狭いです。先端の凹部が台形の形をしており、浅いです。
コロニアルNEO/旧クボタ 2001年~
コロニアルNEOはクボタ(現ケイミュー)の製品で2001年頃から製造販売されており、最も市場に普及しているカラーベストシリーズですが、現在は廃盤となっています。
ぱっと見、前項でご紹介したザルフ(グラッサ)とよく似ていますが、屋根材と屋根材の隙間が狭いこと、先端の凹部が台形になっているのがコロニアルNEOの特徴です。
コロニアルNEOは、経年で全体的に白っぽく変化していることが多い気がします。その他のノンアスベスト屋根材よりは比較的、不具合が少ない印象です。
コロニアルNEOは製造年によって品質が異なるようで、全く不具合が起こっていないケースもあり、一概に塗装できないとは言いにくいところがありますが、その他のノンアス屋根材と同等に扱えば塗装しない方が安全な屋根材と言えます。
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コロニアルNEOの特徴
屋根材と屋根材の隙間が狭く、先端の凹部が台形になっています。
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コロニアルNEOの割れ・欠損
割れや欠損といった不具合が生じます。
塗装できない屋根の対処方法は?
塗装できない屋根の対策は2パターンあります。
①屋根を葺き替える
②カバー工法で改修する
アスベストが含まれていないので葺き替えも可能です。葺き替えるメリットは、屋根下地の劣化があった場合に併せて補修できるという点です。万全を求められる場合は葺き替えが良いと思います。
次に、カバー工法を選択するメリットは、既存の屋根材の撤去処分費用が削減できるので葺き替えと比べて若干コストが安い点と、施工中に雨が降っても雨漏りする心配がないことです。デメリットは、屋根下地の劣化状態が確認できないという点です。
屋根下地が劣化している部分は足で踏めばわかる(腐食部はフワフワするから)という方もいますが、私がやってみたところ結果はその方法で探るのは不十分でしたので、足で踏んで下地の劣化を判断する方法はお勧めできません。
それでも塗装した場合のリスク
パミールのやレサスのように層状剥離を起こしていたり、ひび割れが多く見受けられる場合は誰が見ても塗装できないと認識するはずですが、コロニアルNEO等でひび割れもなかった場合、気付かずに塗装してしまったり、わかっていても予算の都合で塗装メンテナンスを選択するケースも少なくないと思います。
問題は将来どうなるか?です。絶対に問題が起きるとは言えませんが、おそらく数年後に微細なひび割れが発生するのではないかと予想されます。
つまり、将来割れてしまうということは、ノンアスベストの屋根材に塗装をしても屋根材の強度が増すことにはならないことを意味しているので、あくまで次のメンテナンスまでの一時凌ぎであるという心づもりでいることが重要ではないかと思います。
微細なひび割れが即雨漏りに繋がることはありませんが、塗装して3~5年程度で屋根材が割れるとすれば、それを良しとするか無しなのか、予めよく考えておく必要があります。
繰り返しますが、万全を求めるなら塗装をしない選択をするのがベストだと思います。
塗装以外の屋根のメンテンス方法はこちら