外壁が汚れて来たから塗り替えたい?
ちょっと待って、外壁が汚れている原因をご存じですか?汚れたら塗り替える、ではまた汚れてしまいますよ。
このページでは外壁が汚れる原因と正しい対策を説明しています。
外壁の汚れ
外壁が汚れているときれいにしたい願望が生まれますよね。これが外壁塗装工事のきっかけになるわけですが、きれいに塗り替えても数年後にまた同じように汚れてしまうとしたらどうでしょう?無駄だと思いませんか?
単純に汚れを落としたいのであれば洗浄で汚れを落とせば良いのです。でもまた汚れてしまいますよね。きれいを保ちたいなら洗浄だけでは不十分なので、汚れにくい塗料で塗り替える対策が必要です。
ところが汚れにくい塗料を塗れば解決するというものではありません。塗料の選定を間違えるとせっかくきれいに塗り替えたのに数年でまた元の様に汚れてしまうことになります。
そこで重要なのが外壁が汚れている原因を正確に把握することなのですが、まずはこちらの2枚の画像をご覧ください。
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雨がかりと外壁汚れの関係1
雨がかりがある(雨に濡れる)部分だけ外壁が汚れている。軒の下や庇(窓)の下は汚れていない。
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雨がかりと外壁汚れの関係2
雨がかりがない(雨に濡れない)部分だけ外壁が汚れている。全体的に汚れていなのに軒下や戸袋の下だけ黒く汚れている。
汚れの種類の違い
どちらも同じような築年数で似たような構造のモルタル壁の妻側ですが、汚れ方には真逆の現象が起きています。
左の画像1の方は、雨がかからない部位はきれいで雨がかかる部位だけ汚れています。一方で右の画像2の方は、雨がかかる部位はきれいで雨がかからない部位だけ汚れています。
どうしてこのように真逆の現象が起こるのでしょうか?ここに外壁の汚れの本質があります。
画像1は方角が北側の外壁になり陽当たりが悪い方角なので、外壁が雨に濡れると乾きにくい条件にあります。つまり湿った外壁が微生物の温床になっているのです。これを微生物汚染といいます。
画像2の方角は南側の外壁です。陽当たりが良い方角なので外壁が雨に濡れても早く乾くため、微生物の温床となる水分が少ない条件にあります。つまり黒く汚れている部分は空気中の汚れが付着しているということです。
どちらの外壁も汚れている印象を受けると思いますが、それぞれ汚れの質が異なるので、塗り替える場合は塗料の選定も変わって来ます。
雨に濡れやすい外壁と濡れにくい外壁
外壁の汚れ問題を解決するには水の性質を知っておくことが鍵となります。たとえば外壁が水に濡れやすいか濡れにくいかによって汚れ方が違うのです。これを濡れ性といいます。
濡れやすいとは、外壁が雨に濡れた場合の水滴の接触角度が小さいことを示しており、濡れにくいとは、外壁が雨に濡れた場合の水滴の接触角度が大きいことを示します。
コンタクトレンズは親水性接触角度が小さいとは、水がなじみやすいということで例えばコンタクトレンズがこれを利用しており、目に入れても痛くないのです。
逆に接触角度が大きいとは、水を弾くことで例えばフッ素加工のフライパンでのように表面全体がじと~っと濡れることはありません。
フッ素加工のフライパンは疎水性(撥水性)の性質があります。
塗料にも浸水性と疎水性(撥水性)の性質を持つ塗料があり、劣化の状態や立地条件、外壁の構造などを考慮してどちらの性質の塗料が適しているかを判断する必要があります。
湿気が多い立地に親水性塗膜は相性が悪い
振興団地の新築住宅の外壁が汚れているのを見たことはありませんか?広島でいえばこころや春日野などの団地です。
築年数が浅いのにもう外壁が黒く汚れてしまっている家が沢山あります。これは外壁材が親水性の性質を持っていることが要因なのです。
>>しんちゃんの失敗しない外壁塗装【親水性塗料ってなに?】を視聴する
また微生物の胞子は飛散することで周りにも繁殖を拡げて行きます。エアコンの室外機に微生物汚染が発生しているのは外壁に発生した微生物の胞子が飛散したものです。
親水性の性質は雨に濡れるとじわ~っと雨が外壁になじんでしまう(雨を弾かない)ため、乾きにくく微生物の温床になりやすいのです。
つまり、親水性の性質を持つ塗料で塗り替えてしまうとまた数年で同じ現象が起こり元通りに汚れてしまうわけです。
山を切り崩して造成した団地や周りに田んぼや畑や林がある立地には親水性塗膜は最悪な相性になるので疎水性塗膜を採用することをお勧めします。
親水性より疎水性の方が良い?
ここまで言うと親水性が良くないように聞こえると思いますが、一概に親水性が悪いというわけではないのです。
塗料メーカーは長年汚れにくい塗料の研究開発を進めて来ており、外壁を長くきれいに保てるように汚れが付きにくい低帯電性(静電気を帯びにくい)塗料を開発しました。
次に、汚れを付着しにくくすることだけでなく、汚れが付着しても雨が洗い流してくれるセルフクリーニングという考え方にたどり着き、それまでの大半を占めていた疎水性から親水性の性質がある塗料へと転換したのです。
これにより通常の車の排気ガス汚れや空気中の汚れが外壁に付着しても雨が洗い流してくれるようになったので、確かにきれいな外壁が長続きするようになりました。
一方で外壁が濡れやすくなったことで、日当たりが悪い方角面の外壁に苔やカビが生えて汚れてしまう微生物汚染という新たな問題が起こるようになってしまったのです。皮肉な話ですね・・・
湿気が多い立地には疎水性(撥水性)塗膜の方が微生物汚染は発生しにくくなります。外壁が濡れにくいので微生物のエサとなる水分が少なくなるからです。
外壁を黒くすればいいんじゃないの?
外壁を黒くすれば確かに排気ガス汚れや微生物汚れも目立ちにくくなりますが、新たな問題が起こります。
黒は熱を吸収する色なので外壁の温度が高くなることで外壁材の伸縮が大きくなり、目地シーリングにも塗装している場合は目地表層が割れやすくなります。
さらに外壁の熱収縮が大きくなると、目地シーリングが引っ張られたり圧縮されたりを繰り返すことで負担がかかってしまうためシーリングが早く劣化してしまいます。
あるいは、室内が暑くなる可能性が高くなりますから、汚れを目立ちにくくするために外壁を黒にすればいいというのは安易すぎます。
外壁が汚れる原因と条件まとめ
・現行の塗料の90%以上が親水性の性質を持っている
・陽当たりが悪い方角面は雨に濡れた外壁が乾かず微生物の温床になる
・湿気の多い立地や日当たりが悪い方角面に親水性塗膜は最悪な相性になる
・汚れを目立たなくするために外壁を黒にすると目地が割れる新たな問題が起こる