
建築業界は、残念ながら手抜き工事や施工不良が絶えない業界です。雨漏りの原因を調査するために屋根を剥がしてみたり、屋上のアルミ笠木を外してみたりすると、たいてい手抜き工事とも言えるような施工不良が発覚し、落胆することが非常に多いです。
どうしてこのようなことになるのでしょうか?手抜き工事や施工不良は、職人の人間性に起因するものなのか、理由をひも解いてみます。
独立を夢見る職人たち
-
-
塗装屋さんだったり防水屋さんだったり、専門業種の会社に就職し、親方のもとで仕事を覚えるものです。どんな業種でも、3年もすれば一応は一通り出来るようになります。
職人はいつかは独立したいと夢見ているものなので、出来るようになったと錯覚すると独立してしまいます。これが手抜き工事や施工不良の始まりなのです。
親方の元で働いていたときは、何かあればその都度親方に教えてもらえていた。でも独立してしまうと教えてくれる人が居なくなるわけです。
例えば、ある塗装職人A君が独立をしたとします。取引先を探さなないといけませんね。
A君は工務店に営業して回ります。しかしどの工務店も既に取引している塗装屋さんがいるわけですから、どんな人間かも知らないA君と取引を始める理由が必要になります。
「安くしますんで、一度自分の仕事を見てもらえないですか?」
そうです。A君は今取引している塗装屋より安くしますと営業することになりますよね。では、どうやって安くするのでしょう?
ここが重要なのです。同じ塗装職人なのですから、安くするということはそれだけ仕事に差が出るわけです。つまり“手抜き”をして安くしなければならないわけです。
安ければよいというものではないですよね。
学び続ける姿勢
独立してからは知識や技能レベルも向上しにくくなります。なぜなら、平素は現場作業に追われ、夜は請求書や見積書作成の事務仕事に追われる日々になるからです。
勉強する時間はありません。
こういう環境下にある職人がどうやって知識を得続け、成長して行けるのでしょう?まず無理な話です。
ですから、独立すると同時に成長速度は止まってしまいがちになるのです。
それでも毎日、現場作業をしています。これで十分だ、完璧だと思っている自分の仕事にもし誤りや不足があったとしたらどうなるでしょう?
そうです。施工不良になってしまうのです。人間性の面で言えば、故意ではないので悪い人ではないのですが、第三者からみるとあたかも手抜き工事をしたのではないかと疑われてしまいます。
引き渡し後のアフター点検
工事が完工して引き渡しが済んだら終わり、ではないのですが、終わりになっているのが建築業界です。
我々が売っているのは冷蔵庫や洗濯機のような製品ではありません。購入する前に手で触ってみて、試すことが出来る家電のような製品なら良いのですが、
外装リフォームは、誰がどのようにして塗るか、張るかによって品質が変わってしまう工事なのです。
もし、自分たちが施工した屋根や外壁、塗装工事や防水工事に問題があったとしたら、その問題に気付くときはもうお客様に被害が及んでいるときになります。
例えば雨漏りして初めて気付く、という具合です。なんとも理不尽な話ですよね。
だから、自分が作った屋根や外壁がその後10年間問題なく性能を発揮しているかどうかを確認することが重要なのです。
それはアフター点検を継続して行うことと、もしも指摘があった場合は真摯にアフター対応する姿勢が必要になります。
ところが建築業界では、アフター点検を行うのは元請け業者のみです。専門業者は行いません。だから、知識や技能レベルが向上しないのです。
もしも、施工に問題があったとしても気付かないのです。気付くことが出来れば素直に是正すれば良いのですが、そういう環境にはないのです。
PDCAサイクル
-
-
PDCAサイクルとは品質管理の基本的な考え方のことを言います。
PLAN(計画)→DO(実行)→CHECK(検証)→ACT(処置)と回してPLAN(計画)に戻す。これをグルグル回し続けていくと、品質は向上し続けることになります。
いい替えてみると、PLAN(計画)は設計ですよね?DO(実行)は施工になります。CHECK(検証)は検査、ACT(処置)は手直しということです。
下請けの専門業者レベルでこのPDCAサイクルを回している業者は少ないので、知識や技能レベルが向上して行かないのです。
いかがでしょうか?
このように、手抜き工事や施工不良は一見、職人の人間性に起因するものというようなイメージがあると思いますが、建築業界がこのような環境にあるので、あたかも手抜き工事のように思われてしまうのです。
まとめ
職人は独立した後も高い意識を持ち続け勉強を怠らないようにする
自分の知識や技能レベルを過信せず自分の仕事をアフター点検で追い続ける
不具合があった場合は検証し真摯に是正する